○春日・大野城・那珂川消防組合消防本部感染症対応要領
平成28年9月26日
訓令第6号
(目的)
第1条 この要領は、迅速な現場活動を遂行する上で、消防隊員、救助隊員及び救急隊員並びにバイスタンダーが感染症の病原体に感染する事故を未然に防止するとともに、事故発生時の初動対応について万全を期すことを目的とする。
(平31訓令3・一部改正)
(1) 隊員 消防隊員、救助隊員及び救急隊員をいう。
(2) 血液等 汗を除く全ての湿性生体物質(血液、体液、分泌物及び排泄物。)をいう。
(3) 血液等曝露事故 現場活動において血液等に曝露することをいう。
(4) フォローアップ検査 ベースライン検査を含む追跡感染検査をいう。
(平31訓令3・追加)
(標準予防策)
第3条 標準予防策は、感染が疑われているか確定しているかにかかわらず、医療ケアが提供されるいかなる現場においても、全ての傷病者に適用される一群の感染予防策である。傷病者の病気に関係なく血液等が傷のある皮膚、粘膜と直接的又は間接的に接触が予想されるときは、手袋、マスク、感染防止衣、ゴーグル等の標準感染予防策(以下「スタンダードプリコーション」という。)をとり、手洗いをして隊員自身を守ることである。
(平31訓令3・旧第2条繰下・一部改正)
(活動の原則)
第4条 隊員は、あらかじめ病原体等の感染者かどうかを把握することができない点に留意し、救急活動等を実施する場合には、自己防衛を基本とし、傷病者の血液等への直接接触を極力避けて活動するとともに、救急活動等で手指に創傷等を負うことがないよう十分注意するものとする。また、傷病者のプライバシー保護に十分留意するものとする。
(平31訓令3・旧第3条繰下)
(感染防止及び感染症別の対応)
第5条 現場活動の実施に際し、感染防止を図るために次の措置を講ずるものとする。
(1) 救急隊員は、必要な情報を入手し、「感染症の患者の移送の手引きについて」(平成16年健感発第0331001号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)に基づき隊員のスタンダードプリコーションの実施に加えて、必要な感染経路別予防策を図るとともに、各感染症疾患に有効な感染防止資器材を活用すること。
(2) バイスタンダーに現場活動への協力を依頼する場合においても、適切な感染経路別予防策の指導を行うよう努めること。
(3) 救急車内、救急資器材等の消毒及び滅菌については、「感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて」(平成16年健感発第0130001号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)及び各消毒薬の殺菌能力、使用領域に基づき適正に行うこと。
(平29訓令7・一部改正、平31訓令3・旧第4条繰下・一部改正)
(感染症傷病者搬送後の措置)
第6条 感染症傷病者を搬送した救急隊長は、所属長に報告するものとし、感染予防策が完全に実施できたことが確認できれば、所属長の指示のもと、その後の業務に着手するものとする。
(平31訓令3・旧第5条繰下)
(感染性廃棄物の処理)
第7条 現場活動で使用した感染性廃棄物は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号)に基づき処理するものとする。特に、重症急性呼吸器症候群(SARS)、新型インフルエンザ等二次感染の危険性が強く疑われる感染者の対応で使用した廃棄物については、搬送先医療機関に廃棄を依頼するものとする。なお、やむを得ず署所に持ち帰った場合は、指定された感染性廃棄物専用容器(リペール容器)に入れ感染の拡大防止を図るものとする。
(平31訓令3・旧第6条繰下・一部改正)
(感染防止等知識の習得)
第8条 救急隊員は、感染症等に対する感染防止対策を図るため、次に掲げる事項の習得に努めるものとする。
(1) 手洗い・うがいの励行、体力増進の必要性及び衛生、健康管理に関すること。
(2) 各種感染症の伝播形式、発症までの経緯、感染症の疑いがある傷病者に接触する場合の措置及び必要な関係法規に関すること。
(3) 救急隊員、救急資器材、救急自動車等の消毒方法及び消毒薬の知識に関すること。
(4) 感染のおそれがある救急処置(人工呼吸、止血、口腔清拭、異物除去等)を行う場合の感染防止対策、救急資器材の取扱い及び保管方法に関すること。
(5) 傷病者のプライバシー保護に関すること。
(平31訓令3・旧第7条繰下・一部改正)
(応急措置)
第9条 血液等曝露事故が発生した場合の応急措置(血液等曝露事故部位の洗浄法)は、次のとおりとする。
(1) 注射針、資器材などで刺傷、切傷を受けた場合、大量の流水と石鹸で傷口を十分に洗浄し、消毒用エタノールなどで傷口を消毒すること。
(2) 血液等又は汚染物で手指、皮膚等が汚染された場合は、大量の流水及び石鹸(眼球、粘膜への曝露の場合は大量の流水)で十分に洗浄すること。
(3) 血液を絞り出す試みや、消毒などに気を取られることなく、速やかに医師と連絡を取りHbsヒト免疫グロブリン、抗HIV薬(内服薬)を投与するまでの貴重な時間を失わないこと。なお、抗HIV薬予防服用同意書(別紙1)は、タイムロスを防ぐため、服用の意義、リスク等を理解し事前に準備しておくこと。
(平29訓令1・一部改正、平31訓令3・旧第8条繰下・一部改正)
(血液暴露事故発生時の対応)
第10条 隊員に血液等曝露事故が発生した場合は、感染症別対応フローチャート(別紙2~4)に基づき対応し、速やかに血液等曝露事故報告書(別紙5)により、消防長に報告しなければならない。また、必要に応じて総務課財務管理係と協議を行い、専門医、産業医等への指導・助言を受けるものとする。
2 バイスタンダーに血液等曝露事故が発生した場合は、バイスタンダーにおける対応フローチャート(別紙6)に基づき対応し、速やかに血液等曝露事故報告書(別紙5)により、消防長に報告しなければならない。
(平31訓令3・追加)
(救急感謝カード)
第11条 バイスタンダーが応急手当を実施していた場合は、救急感謝カード(別紙7)を交付するものとする。
(平31訓令3・追加)
(曝露源血液検査)
第12条 曝露源血液検査における留意事項は、次のとおりとする。
(1) 過去の検査結果の有無にかかわらず、血液検査を行うこと。
(2) 医師から曝露源血液保有者に対し血液検査への同意を指示された場合は、「針刺し・切創・粘膜曝露に関わる血液検査のお願い」(別紙9。以下「同意書」という。)を用いて実施すること。
(3) 前号の同意を本人から得られない場合は、3親等以内の親族(成人に限る。)の同意を得ること。この場合、同意書の写しを消防本部で保管すること。
(4) 前2号の同意が得られない場合は、報告書にその旨を記載し、不明血として取り扱うものとする。
(5) 搬送先医療機関で血液検査ができない場合は、警備課長及び警防課長に報告するとともに不明血として取扱い、福岡徳洲会病院に連絡して対応するものとする。
(6) 曝露源血液検査項目は、下表のとおりとし、その他必要項目については、医師の指示によるものとする。
曝露源血液検査項目 | ・HBV検査(HBs抗原) ・HCV検査(HCV抗体) ・HIV検査(HIV抗原抗体スクリーニング検査) |
(平29訓令1・一部改正、平31訓令3・旧第9条繰下・一部改正)
(予防治療等)
第13条 血液検査結果に基づく予防治療及びフォローアップ検査における留意事項は、次のとおりとする。
感染症の種類 | 留意事項 |
(1) HBV感染症 | ア 血液検査が陽性の場合は、予防治療が必要となる。ただし、血液等曝露者が予防的なHBワクチン接種によるHBs抗体陽性者の場合は、予防治療、フォローアップ検査は不要とする。 イ 不明血は、曝露源のHBsを検討することは不可能であるため、血液検査によるHBs抗原・抗体のフォローアップ検査での対応とする。また、血液等曝露者がHBs抗体陽性者であれば対応は不要とする。 |
(2) HCV感染症 | 曝露源血液保有者のHCV抗体又は不明血にかかわらず、血液検査によるHCV抗体のフォローアップ検査での対応とする。 |
(3) HIV感染症 | ア 血液検査が陽性の場合は、2時間を目安として福岡徳洲会病院を受診し、処方された抗HIV薬を直ちに服用すること。また、直近の受診可能な日にHIVブロック拠点病院である九州医療センターを受診し、治療方針に従うこと。なお、福岡徳洲会病院以外の医療機関で曝露源血液保有者の血液検査を行った場合は、検査結果を血液等曝露者が、福岡徳洲会病院に持参し2時間を目安に抗HIV薬を服用すること。 |
2 血液検査が陰性の場合は、ウイルスなどの病原体に感染してから検査で検出できるようになるまでの空白期間があることから、フォローアップ検査を受けるものとする。
3 フォローアップ検査は、肝機能検査及び各感染症の採血項目を血液曝露直後及び1、3、6ヵ月後に受けるものとする。
4 フォローアップ検査項目は、下表のとおりとし、その他必要項目については、医師の指示によるものとする。
フォローアップ検査項目 | ・肝機能検査(AST・ALT) ・HBV検査(HBs抗原・HBs抗体) ・HCV検査(HCV抗体) ・HIV検査(HIV抗原抗体スクリーニング検査) |
(平29訓令1・一部改正、平31訓令3・旧第11条繰下・一部改正)
(費用負担及び事務手続)
第14条 事故対策の費用負担及び事務手続については、次に掲げるとおりとする。
(1) 曝露源血液保有者の血液検査費用は消防本部が負担し、その手続きは警防課救急情報係が実施する。
(2) 隊員の血液等曝露事故による公務災害補償制度に係る事務は、本人の申請に基づき総務課財務管理係が実施する。
(3) バイスタンダーのフォローアップ検査に関する消防業務賠償責任保険に係る事務は、本人の申請に基づき警防課救急情報係が関係資料を取りまとめ、総務課財務管理係が請求手続きを実施する。
(4) 救急業務協力者の血液等暴露事故による消防団員等公務災害補償等共済基金に係る事務は、本人の申請に基づき警防課救急情報係から春日市、大野城市又は那珂川市の消防担当に連絡を行う。
(5) 実習生、研修生等に血液等曝露事故が生じた場合は、職場、学校等のマニュアルに従うものとする。
(6) 隊員が、個人の判断において医療機関を受診した場合は、自己負担とする。
(平29訓令1・平30訓令13・一部改正、平31訓令3・旧第12条繰下・一部改正)
附則
この訓令は、平成28年10月1日から施行する。
附則(平成29年2月1日訓令第1号)
この訓令は、公布の日から施行する。
附則(平成29年11月1日訓令第7号)
この訓令は、平成29年11月28日から施行する。
附則(平成30年8月1日訓令第13号)
この訓令は、平成30年10月1日から施行する。
附則(平成31年3月1日訓令第3号)
この訓令は、公布の日から施行する。
別紙 略